- 2025年5月8日
円形脱毛症の原因と治療法
- 1.円形脱毛症の原因と症状
- 1-1: 円形脱毛症の主な原因とは
- 1-2: 円形脱毛症の初期症状を見極める
- 1-3: どのような人が円形脱毛症になりやすいのか
- 2.円形脱毛症の種類と進行
- 3.円形脱毛症の治療
- 3-1: ステロイド外用療法
- 3-2: ステロイド局所注射療法
- 3-3: 紫外線療法
- 3-4: 経口JAK 阻害薬による内服薬治療
1. 円形脱毛症の原因と症状
1.1 円形脱毛症の主な原因とは
円形脱毛症は、毛包(毛を作る皮膚の組織)に対するに自己免疫反応によって引き起こされる脱毛症の1種で、免疫系が誤って自分自身の毛包を攻撃することで発症します。この自己免疫の誤作動がなぜ起こるのかは完全には解明されていません。しかし、起こりやすさ(素因)と発症の引き金(誘因)についてはいくつかの因子が関与していると考えられています。
まず、遺伝的素因が大きな影響を与えている可能性があります。円形脱毛症患者さんとの関係(親等)が近い人ほど発症率が高いという報告があります。また、円形脱毛症に自己免疫性疾患やアトピー性皮膚炎を合併しうることが知られています。
従来は精神的ストレスが発症の誘因とされていました。しかし近年,精神的ストレスは誘因のごく一部であることが報告されています。
これらの素因と誘因が複雑に組み合わさり、円形脱毛症の発症や進行に影響を及ぼしているものと考えられます。
1.2 円形脱毛症の初期症状
円形脱毛症の初期は、痒みや刺激感がほとんどないため、自覚できないことがあります。
特徴的な症状は、頭皮の円形から楕円形の脱毛斑です。脱毛斑の大きさは直径1cm未満のものから数センチに達するものまでさまざまです。毛が抜けた部分の皮膚自体は健康で滑らかに見えることが多く、赤みや腫れ、かさぶたがない場合が一般的です。
また、脱毛は頭皮だけでなく、まゆ毛やまつげ、体毛にも生じることがあります。これにより、顔では部分的なまゆ毛やまつげ、ひげ、鼻毛の脱落が見られることもあります。
さらに、円形脱毛症の進行期では、脱毛部の頭皮を虫眼鏡で観察すると独特な形状の短い毛が見られることがあります。これらは、毛が根元付近で途切れ短くなっている状態を反映したもので、活動期の円形脱毛症の指標となることがあります。
初期段階での円形脱毛症は、痛みや痒みを伴わないため違和感が少なく、大きくなって他人に指摘されるまで気づかないこともあります。脱毛部を見つけた場合は、ほかの原因による脱毛症との鑑別が必要ですので早期の皮膚科受診をお勧めします。
1.3 どのような人が円形脱毛症になりやすいのか?
円形脱毛症の生涯発症率は2%で、男女差はありません。円形脱毛症の平均発症年齢30.6歳、家族歴がある場合が約5%、合併症・既往歴としてアトピー性皮膚炎が約20%、甲状腺疾患が約3%との国内からの報告があります。約30%が再発例であることから、一度円形脱毛症になった人は円形脱毛症を再発しやすいといえます。
2. 円形脱毛症の種類と進行
円形脱毛症にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる進行の仕方と症状が見られます。
●単発型:最も一般的なタイプで、頭皮に一つの脱毛斑が現れます。この型は脱毛斑の数が少なく、比較的軽度であることが多く、自然に回復するケースも少なくありません。
●多発型:単発型よりも重篤で、頭皮に複数の脱毛斑が現れます。時間の経過とともに全頭型や汎発型に進行する場合があります。
●全頭型:頭皮全体の毛髪が抜け落ちるものです。この場合より長期間の治療が必要となることがあります。
●汎発型:最も重症なタイプで、頭皮に加えて、全身(眉毛やまつ毛、体毛など)の脱毛が生じます。このタイプの治療は難しく、症状が長期化することが多いです。
円形脱毛症の進行は個人差が大きく、短期間で自然に回復する人もいれば、慢性化して再発を繰り返す人もいます。
3. 円形脱毛症の治療
一般的な治療としてステロイド外用療法、ステロイド局所注射療法、局所免疫療法、紫外線療法などがあります。やや特殊な治療として点滴静注ステロイドパルス療法、JAK阻害剤内服などがあります。年齢、病期(急性期か慢性期か)、重症度(脱毛面積)からどの治療がよいかを個別に決定します。ここでは代表的な治療法について解説します。
3.1 ステロイド外用療法
ほぼすべての年齢(特に12 歳までの小児)、重症度の症例に対して最初に試す治療です。1 日1~2 回外用します。
3.2 ステロイド局所注射療法
脱毛範囲が頭部全体の25%未満である成人に対して行います。脱毛部位への注射は4週から6週に1回行います。
3.3 紫外線療法
当院では、円形脱毛症の治療として紫外線療法(ナローバンドUVB療法)も行っています。ステロイド外用療法と併用することが多いです。当院では、ウシオ電機の皮膚科向け紫外線治療器シリーズの最新機種「セラビーム® UV308 mini LED」を使用しています。単発の小型病変であれば1回の紫外線治療は1分以内に終わります。週1~2回の照射で、10回目から効果が出始め、計20回~30回くらいが目安とされています。
<紫外線療法の目安治療費:保険適用の場合>
・3割負担の方で1回約1,000円
※その他に初・再診料、投薬料などがかかります
紫外線療法に関しての詳細はコチラのブログページをご覧ください。
(リンク:https://alps-hifuka.com/blog/index.php/2024/12/12/post-128/)
3.4 経口JAK 阻害薬による内服薬治療
円形脱毛症の治療において、近年注目されている内服薬に、経口JAK阻害薬である「オルミエント®」(一般名:バリシチニブ)と「リットフーロ®」(一般名:リトレシチニブ)があります。脱毛範囲が頭部全体の50%以上で過去6 カ月間に発毛がみられない症例が対象となります。オルミエント®は15歳以上、リットフーロ®は12歳以上で使用可能です。
経口JAK 阻害薬の開始前には、いくつかの重要な検査を受けていただく必要があります。当院では胸部レントゲンなどの画像検査は行っておりませんので、他院で行った検査結果を持参いただき、問題がないことが確認できてから経口JAK 阻害薬を処方いたします。
重大な副作用として、感染リスクの上昇、静脈血栓塞栓症のリスク上昇、血液検査値異常などが挙げられます。そのため、使用中は定期的な検査実施が推奨されます。